章のタイトルとあわないものを一番最初に説明することになるが,これを抜くことで多くの知識人の重箱の隅をつつくような指摘をうけるものもいやなので,敢えて書くことにする.
前述のとおり,Software RAIDはお薦めしない.というのも,RAID自体が完璧なものではなく時として壊れる[5]のである.そこで,こういった時にどれだけ容易に復旧できるかを考えた場合,デメリットが大きすぎるからである.
また,RAIDで代表されるような高速性を期待した場合にも,64bit PCI 66MHzでアクセスする複数チャネルをもったSCSIカードというものも高価になり,それなら,まともなRAIDカードを購入したほうがよい.
ここまで書いても,まだこれを試したいと思うならば,JF等の文書を参考にすることをお薦めする.
私自身この節でのヨタ話を書きたくて,この文書を書きたかっただけでもある.ここでは特にメイカ別に簡単な説明をしていきたい.
PC用に数ある[7]RAIDカードメイカであるが,特にこのLSI Mega RAIDは大変素姓のよいできになっている.
最近AMIからLSI LogicがこのRAID部門を買い取ったので,LSI Mega RAIDと呼ぶようになったが,AMIの方がなじんでいるであろう.
Linuxでの使用に関しては,多くのカードを"megaraid"というモジュールがサポートしている.
デヴァイスとしてはSCSIとして見える.それゆえ,あまり苦労もせずに使え,またドライヴァも枯れているのでトラブルも少い.特に自作マシンに組み込む場合,あまり相性問題も気にする必要もないであろう.
RAIDの構成は,BIOS上で行うが,最近のもの[8]は,WebBIOSという機能を搭載しているため,GUIでの設定も行うことができる[9].この設定自体も難しくはないであろう.
最近のモデルでは,Elite 1600[10],ハイエンドのEnterprise 1600[11]がある.
また,Toshiba,HP,DELL等のサーヴァマシンにも多くOEM供給されている.
DELL,HP用にすこし前にOEM供給されていたRAIDカードのようである.
Linuxでの使用に関しては,"aacraid"というモジュールを用い,またこのドライヴァは最近[12]になってkernel本体へ取込まれた.
ここには,AAC-364以外にも数種類存在するようであるが,これらをオークションサイトでもみたことはないので,AAC-364について書かせてもらう.
AAC-364は,内部2ch,外部4chのU2W規格のカードである.キャッシュメモリにはECC EDO DRAM DIMM 64MB or 128MBが使える.ボード上にRegistered Chipが搭載されているので,unbufferedなものを使用するのがよいであろう.[13]また,RAIDコントローラとしてはめずらしく,StrongARM 233MHzが搭載されており,他にこれを積んでいるのはMylex ExtremeRAID 2000 or 3000ぐらいである.
RAIDの構築はBIOS上から行う.BIOSの画面も数あるAdaptecのSCSIカードのそれとよく似た雰囲気であり,BIOSの入るためのキーも同じくCtrl-Aである.
型番のAAC〜という名前から推測するに,3.2.3.「Adaptec 2000S, 2050S 2100S, 3200S 3210S, 3400S, 3410S, 2400A」のRAIDカードと違い,Adaptecの流れを汲むカードであろう.
Adaptec社が最近になってDPT社というかつてRAIDカードを専門としていた会社を買収した後にリリースしたRAIDカードである.
最近のAdaptec社のRAIDカードはこの流れを汲んでいるようだ.
2000S,2050S以外[14]は"dpt_i2o"というモジュールで動作することができ,Momongaでもサポートされている.
OSからはSCSIとして見え,RAIDの構築はBIOSから行う.また,ここには記述されていないが,以前DPT社がリリースしたボードもこのドライヴァで動作するようである.
2000S,2050Sは大変特殊なカードで,対応しているマザーボードでないと動作しない.また,カードの写真等をみるとそんなにハイスペックなチップが搭載されているわけではない模様である.あまりパフォーマンスに期待はできないであろう.
2100S,2400Aは明らかに入門用といわれてるもので,i960RSが搭載されており,RAID5での運用は期待できない.あくまで,RAID0 もしくは RAID1用と割りきったほうがよいであろう.[15]
3200S,3400Sは既にディスコンモデルなようであるが,スペック的にはまだまだ充分いける[16]であろうが,これらには大きな問題がある.それはキャッシュメモリとしてECC PC100 SO-DIMMを用いていることであり,まずAdaptec社純正パーツ以外でこれを入手するのは難しいであろう[17].
そして,現行のモデルの3210S,3410Sであるが,RAIDコントローラとしてi80303という最新のチップを搭載し,キャッシュメモリも汎用的なPC100 ECC SDRAM(CL2)を使用することができるようである.
また,32x0Sは内部,外部とも2chであるが,34x0Sは他メイカのカードとは異なり内部,外部共に4ch使えるようである.
老舗のRAIDメイカであったが,最近になってIBM社に買収されたようである.また,今後のリリースもどうなるのかがわからない[18].
他のメイカと同じようにラインナップは,3レヴェルに分かれている.特筆すべきなのは,ハイエンドのextremeシリーズはRAIDコントローラとしてStrong ARM 233MHzを搭載していることであろう
Linuxからは,"DAC960"というモジュールで動作する[19].SCSI経由では見えなく,ブロックデヴァイスとして見える.アクセスには,/dev/rd/c1d1というようなデヴァイスファイルでアクセスする.他のRAIDカードのドライヴァと異なり,メイカ提供のものではないようである.これもRAIDの構築はBIOSから行う.
現行のAcceleRAID 352はi960RN 100Mhz 2ch.Extreme 2000は内部2ch,外部4chで,共にPC100 ECC SDRAMをキャッシュメモリとして使用できるようであるが,カタログスペック上では上限が64MBと他メイカより少い.ただし,普通のDIMMとは異なるBDIMM(Battery Backup付DIMM)がメイカオプションとして用意されている.そしてこれだと256MBまでサポートされているようである[20].SCSIコントロールチップとしてqlogicのものを採用している.
IBM社に買収された影響がいい面ででたようで,Linux用のManagement Toolも提供されている[21].
この会社はめずらしくドイツの会社であったが,現在は既にIntel社に買収されてしまっている.またMylexと異なり,このメイカのRAIDカードは一度も手に触れたことすらないのでカタログスペック等からの解説となる.
最新のモデルの特徴として,i80303を搭載しており,64bit 66MHz PCIに対応している.また,キャッシュメモリがPC133 ECC SDRAM[22]を使えるようになっている.このため,Adaptec社の3210S,3410Sよりは高いスペックが望めるであろう.
Linuxでのサポートに関しては2.2.17あたりからドライヴァ[23]が取込まれており,"gdth"というモジュールを用い,SCSIデヴァイスとして見える.
Momongaでも問題なく使用できるであろう.
RAIDの構築はBIOS上で行う.
その他の特徴として,Alphaプラットフォームをサポートした唯一のカードであろう.ただし,SRMからは認識できない模様なので,起動ディスクには使用できない.
また,ドライヴァ以外のツールもメイカが用意しているという点もあり,お薦めできるものであろう.
もともとは,IBM社のPCサーヴァ用のカードであるので,自作マシンでの使用は考えられていない.それゆえ,相性問題も激しいようである.
Linuxでの使用では,"ips"というモジュールを用い,SCSIデヴァイスとして見える.
RAIDの構築にあたっては,専用のSetup CDを用いて行う.このセットアップCDはver. 4.70からLinuxベイスになっているが,現在の4.80ではSuperMicro P3DR3では動作したものの,P4DCEではうまく動作しなかった.しかし,Linuxベイスに変っていることから,今後のヴァージョンに期待できる.また,ファームウェアのアップデイトもこのCDから行わなくてはならないため,うまく動作しないマシンの場合他に予備のマシンを確保する必要があるであろう.
前述の部分に疑問をもたれると思うが,Setup CDが動作しなかった場合,RAIDの構築はできないのか?というと,そんなことはない.IBM社が提供しているツールにRaidMan[24]というものがあり,これを用いると現在動作しているLinux上でRAIDの構築,管理が行える優れ物である.
現在のラインナップは,ServerRAID 4H,4M,4Lとある.4M,4Lにはi960RN 100MHzが搭載されており,4HにはPPC 750(G3) 266MHzが搭載されている.しかしながら,これらのカード全部にいえることであるが,キャッシュメモリの増設が行うことができない.ゆえに,4L,4Mは値段のわりにパフォーマンスに不満の出るカードになってしまう.また,4Hは純正で購入するにはとても高価なカードであるため,なかなか手がだしずらいとも言える.筆者は幸運にもオークションでかなり安く4Hを購入することができた.ただ,4Hの不満なところは,64bit PCIが33MHzしかサポートしていないことであるが,RAID5のパフォーマンスは現在存在するカードでは最高のものであろう.
いろいろしがらみもあるのだが,自作マシンに使おうと思った場合,このカードは決してお薦めしない.というより,まずRAIDが組めないであろう.
というのも,COMPAQ社のRAIDカード全般にいえることであるが,RAIDの構築にあたってSetup CDを用いるのであるが,これがCOMPAQのマシンであるかどうかを判別しているため,自作マザーボードでは途中で失敗してしまう.かつては,このCDの中にフロッピーイメイジがあって,これを用いれば構築できたが,現在ではそれもないようである.
最近では,Linux上での運用ツールも提供するようになったので,もしかするとServeRAIDのように使用することもできるかもしれないが,既にこのカードを使える状況にはないので,試していない.
逆にいうと,COMPAQ社のサーヴァマシンを用いている場合,このカードを用いるのが得策であろう.
Linuxでの使用では,53xxシリーズは"cciss",その他のカードは"cpqarray"とモジュールを用いる.また,Mylexのカードと同じようにSCSIデヴァイスとは見えず,53xxシリーズは,/dev/cciss/c0d1p1のように,その他は/dev/ida/c0d1p1のようなデヴァイスファイルとしてアクセスする.
53xxシリーズは,IBM ServeRAID 4Hと同様に,RAIDコントローラとしてPowerPC G3 266MHzを搭載しているようであるが,この辺りをあからさまにアナウンスしていないところがIBMと違うところか?
上記の他にもまだまだRAIDカードは存在している.
例えば,Intel社もサーヴァ用途にリリースしており,Intel社のWeb Pageからも容易にその情報が得られる.また,Linuxでのサポートも最近のkernelでサポートされているようである.[25]
また,Adaptec社がDPT社を買収する前に販売していたカードもいくつかあるが,それらはLinuxでのサポートがされていないので,ここでは紹介を割愛させてもらった次第である.
[5] Hardware的にも,Software的にも
[6] 旧AMI
[7] 実際にはそんなにない
[8] 私が試したものでは,Enterprise 1600
[9] ただしPS/2マウスが必要
[10] i960RN 100MHz 2ch
[11] i960RN 100MHz 内部2ch,外部4ch
[12] たしか2.4.17から
[13] このECC EDO DRAM DIMMはあまり市場では見掛けないので,キャッシュが搭載されていないものを購入した場合,http://www.crucial.com/ などから直接購入するのがよいであろう.
[14] 2000S,2050Sについては報告がないので未知
[15] MLの報告によると2400AはRAID0 or RAID1でもパフォーマンスはよくない模様である.
[16] i960RN 100MHzを搭載
[17] 日本では,GreenHouseというメモリメイカのカタログでみることができたが,果たしてこれが動くという保証もない
[18] IBM社のServeRAIDとバッティングもあるため
[19] ただし,extremeRAID 1000, 2000, 3000はi960系のコントローラでなく,StrongARMを搭載しているが
[20] 私が入手したeXtremeRAID 2000には128MBのものが付属していた
[21] 未テスト
[22] 上限256MB
[23] Vortex社から提供されてるものである模様.
[24] なんと,Javaを丸のみである!流石IBM
[25] モジュールは"i2o_block"を使用