グリップといっても、タイヤのグリップのことぢゃないよ。ハンドルのグリップ。このグリップの持ち方ひとつとっても、かなり奥が深いと思っている。右コーナーが苦手なのはなぜか、を補足する意味でも書いておきたい。実際にオレ自身、グリップの持ち方、レバーへの指の掛け方にちょっと気を付けるだけで右コーナーがだいぶ楽になったのだ。
ところで、軸足が右だと左コーナーが楽なのではないか、と書いたのがちょっと意味不明だったみたいなので補足すると、これはつまり、右利きの人は左コーナーのほうが体を自然に使えるのではないか、という意味で書いた。例えばボールを投げるとき、左足を上げ、右足を軸にするだろう。バットを振るときも、左足を上げるなり手前に引くなりしてタイミングを取り、右足は動かさないよね、右利きなら。
つまり、右にタメておいた体重を一気に左に移す、という動作は、バイクと関係ないところで多用しているワケだ。体が慣れているのだ。だから左コーナーは違和感がない。利き腕と反対の腕ではうまくボールを投げられないのと同じで、右コーナーもしっくりこないということはないだろうか。では左利きの人は右コーナーが得意なのか?というと、実はオレの友人に左利きのライダーがいる。「過去の栄光」でもちらっと出てきたくにくにだ。彼自身は右コーナーが苦手だと言っていたと思う。なんだ、ぢゃあ右利き左利きってのは関係ないんじゃないか、と決めるのはまだ早いぜ。
自分じゃなんとなく苦手…と思っていたかも知れないが、ハタで見ているぶんには、右コーナーの方がスムーズでキレがいい走りをしていたんだ。実際に、ライディングフォームも右の方がまとまってたと思う。総じて、すごく不利なライダーだったと思わざるを得ない。だってそうだろ?左コーナーは気分的には楽なのに、軸足ではない方の足でホールドしなくちゃならず、右コーナーは体は自然にさばけるものの、ガードレールとセンターラインの板挟み。それでも、とっても速かったけどね(^-^)
だいぶ補足が長くなってしまったが、本題のグリップの持ち方だ。レバーへの指の掛け方といってもいい。もちろん、これという正解はないし、臨機応変に使い分けているので一口には答えられないとは思うが、オレの場合、おおむね左手は薬指と小指でグリップを握り、中指と人差し指をクラッチレバーに掛けている。右手は、人差し指と親指でアクセルをホールドし、中指、薬指、小指はブレーキレバー担当だ。流して走るときは中指一本だけブレーキレバーに掛けている。
いろいろと試行錯誤して、この持ち方に落ち着いたんだけど、これはつまり、左手でハンドル操作をするという前提というか認識の上でのことなのだ。レバーの操作をする上で、右手と左手の仕事量ってあまりにも大きな違いがある。特にコーナリングにおいてね。大排気量車でワインディングを攻めるとき、2速ないしは3速に放り込んだらあとは変速しないまま、ということも多い。つまり左手はレバー操作をほとんどしていないということになる。それに対して、右手はブレーキレバーとアクセルグリップの、両方を上手く使わなければならない。コーナー毎に、とっても忙しいのだ。
逆ハンドルを切って、トレール反力を利用してリーンするのは原則としてよくない、と前に書いた。リヤを軸にフロントに蛇角をつけたいところを、逆にフロントを軸にリヤを振り出すような動きになってしまうからだ。効率よく向きを変えられなくなるのは絶対に避けたい。とはいえ、これはハンドルグリップに一切の入力をするな、というワケではない。現実には、リーンのキッカケのところで、左コーナーなら左のグリップに、右コーナーなら右のグリップに体重を乗せていると思う。
ダラッと走るなら、右手だけの片手運転でずっと走れるが、その体勢だと右コーナーは何てことなくリーンできても、左コーナーだと違和感がないだろうか?もしもあるとするならば、それは左グリップに体重を乗せることができないためだと思う。つまり、多かれ少なかれ、イン側グリップに荷重することでリーンのキッカケを得ているという証拠だろう。だけどこれは必ずしも悪いことでもない。ハンドルを切るような入力になってしまわない限り、体重を乗せるのは一向に構わない、と考えてもよい。
だが、イン側のグリップに体重を乗せ続けるのは、イン側に切れてこようとするフロントタイヤに逆らうことになってしまいがちなのも確かだ。ではどうするか、というと、リーンが始まったら、とっととイン側のグリップから荷重を抜いてしまえばよい。荷重を抜くだけでなく、ほんのちょっと、イン側のハンドルを引いて、つまりイン側に切るような入力をして、蛇角が付くのを助けてやることができればもっといい。
だが、ブレーキをリリースしてリーンしていく忙しいときに、イン側のグリップから荷重を抜く、というのは口で言うほど簡単ではない。まず、荷重を抜くには、力が抜けなくては。イン側の腕、特にヒジのあたりをブラブラと振れるくらいに腕から力を抜いておきたい。ヒジは少しだけでいいから、曲がった状態を保とう。たとえブレーキングの最中でも、腕が真っ直ぐになるのは避けたい。猫背になり、少しヒジを上げて、オフ車のライダーに近い体勢だと都合がいいようだ。
このときグリップは、体操の鉄棒を握るように手のひらのど真ん中で握ってしまってはダメだ。グリップと手が直角になるようではいけないのだ。ハンドルというのは通常、少し絞り角が付いている。ガシッとハンドルを握ってしまうと、手は外を向いてしまうだろう。結局、族車のオニハンのようになり、ヒジが上がるどころか、腕ひしぎ逆十字を食らったかのようにヒジ関節が極まってしまい、自由度を欠くことになる。まさに人間ステアリング・ダンパーだ。なってる人が多いぞ。
これを避けるには、グリップを持つとき、釣竿やゴルフクラブなどのように、斜めに持つのがコツだ。思い切って手を外側から回し、人差し指と中指の間にグリップを通すくらいのつもりで思い切って手を内側に向けるのだ。極端に書くと、ヒジから先がハの字になっているくらいでちょうどいい。もしも、体に比してバイクが大きく、ハンドルが遠くてヒジに余裕ができない場合は、可能な限り前に座り、タンクに胸がつくほど前傾すればよい。そうまでしても、ヒジの曲がりを作っておくのは大事なのだ。
こうして、ヒジ関節の自由度を保っておくと、イン側のグリップから荷重を抜こうというときは、単にヒジをもっと深く曲げるだけで済む。一連の動作として織り込まれてくると、グリップから荷重を抜きつつハンドルがイン側に切れるのを助ける操作が、リーンと同時にヒジをクッと曲げるだけでできるようになる。
さらに、オレは意識して左手で操舵をしている。つまり御法度のはずのハンドルを切る操作を、少しだけやっているのだ。なにしろ、左手はコーナーの中ではほとんどレバーワークをしないから、薬指と小指でテニスのラケットを握るように、ややしっかりと握り、左コーナーでは引き、右コーナーでは押している。切り返しのキッカケにも使う。例えば、右コーナーの立ち上がりで左グリップを押せばバイクは起き上がろうとする。そこを捕らえて体重を移動し、すぐに左グリップを引いて直進に戻すのだ。なにもこれだけが入力のすべてではなくて、あくまでも補助だが、意識して使っているのは確かだ。
では右手はなにしてるかというと、これはもうブレーキとアクセルに集中だ。昔は左手側と同じで、薬指と小指でグリップをホールドし、人差し指と中指をブレーキレバーに掛けていたが、この持ち方で強くレバーを引いてハードにブレーキをかけようとすると、どうしても手が外を向いてしまう。指にだけ力を入れて、手首やヒジはなるべくフリーにしておきたいのだが、上手くいかなかったのだ。アクセルの操作もやりづらかった。たとえば、一気に半開、という時でも、ガバッと腕ごとヒジから先を動かさないと開けられないのだ。当然ブレーキをかけながらアクセルを煽って回転を合わせるのもやりづらかった。
だが、人差し指と親指で輪を作るようにアクセルをホールドすると、すべてが解決した。
手を外から内に向ける形でグリップを持てるので、手首やヒジにとっても余裕が持てるし、めったに必要にならないが、小指が掛かるくらいまでレバーを握ると、握力全開でブレーキをかけることもできる。特に都合がよかったのは右コーナーで、ヒジを深く曲げたままのアクセル操作、とくに開けていく操作が非常にやりやすい。コークスクリューブローのように、手首を内側にひねるだけで、アクセルを大きく開けられるのだ。親指の腹で、グリップの下側を押し込んでやるような具合でコントロールできて、微妙な操作にもまったく問題ない。
コーナーで腕から力が抜けない人はもちろん、フロントタイヤの偏摩耗などに悩んでいる人、ブレーキング中のシフトダウンで回転数を合わせるのが苦手な人、右コーナーでアクセル操作が窮屈な人なんかも、一度グリップの持ち方、レバーへの指の掛け方を工夫して見ることを薦めるね。
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