右コーナーが苦手なのはなぜか


右コーナーがなんとなく苦手で…というハナシをたまに耳にする。だいたいにおいて、特に右コーナーでひどいコケかたをした経験がある、などというのとは別に、思い当たるフシもないんだがなんとなく苦手、左コーナーのほうがしっくりくる、というものだ。これはなぜなんだろうか。ちょっと自分なりに考察してみたい。

実はオレ自身、右コーナーが苦手だった。上記の症状はつまり、オレをも含んでいる。日本は北半球にあるので、コリオリの力が働いていて右に曲がりにくいのだ、とか、アレが左曲がりの人は、リーンに逆らっているので右に曲がりにくいのだ、などと珍説怪説いろいろあるが、実際のところどうなんだろう。

やはり、日本が左側通行だから、というのは無視できないと思う。日本のワインディングにおいては、左コーナーは結果的にブラインドコーナーが多くなるんだが、コーナーへのアプローチではあまり悩まなくてもいい場合が多い。取りあえずセンターライン付近にアプローチし、リーンしたら後は目一杯インに向かって寄ろう寄ろうとしていけば、奥で曲がり込んだりしていない限り、自然とコーナーをクリアできてしまうからだ。

特に勝手知ったいつものコースならなおさらで、思いっきりセンターラインを踏むかというところまでアウトからアプローチしても、対向車が来ていなければ何ら心理的な負担はない。ブレーキをかけて、いざリーンをしようという段階でも、目の前には対抗車線が広がっているので、これ以上突っ込んだら危ない!という人間が動物として持っている危険回避の本能もなりを潜めている。実質的にはセンターラインは壁と同じなんだが、モノとして見えないので心理的にはどうということもなく行けちゃうのだ。

インに寄るにしても、たいていは道路の左端はガードレールか壁なので、どうせそれ以上は寄れないため、何も考えずに行ける。いわゆる道なりというヤツで、ライン取りに悩む必要がないか、または極めて少ない。手を抜けるわけだ。まぁ効率良く巧く速く走ろうとすると、たとえ左コーナーであっても、瞬時の判断でライン取りを考える必要があるわけで、そこでこそ差が付くわけだけど、イージーに走ろうとすれば走れちゃうってのが左コーナーだと思う。

これに対して右コーナーはどうだろう。まず、アウトからアプローチしようとすると、道路左端ということになってしまって、路面が荒れていたりゴミや砂が浮いていたりして余計な気を使わされる。おおむね目一杯アウトには寄れず、3分の2とかせいぜい4分の3程度というアバウトな位置からアプローチすることになる。また、本来ならもう一息二息奥まで真っ直ぐにアプローチして、そこで強く向きを変えたほうが後々楽なはずなのに、目前にガードレールや壁やガケが迫ってくるので、ついついナロウにインに寄りはじめてしまい、アプローチで意識して向きを変える、というもっとも大事なことがおろそかになりがちだ。

インに寄るときにも、センターラインまでしか寄ることは許されていないにもかかわらず、前述のようになんとなくインに寄ってしまったところからリーンを始めるので、すぐにセンターラインに達してしまう。向きを変えるようなメリハリのあるリーンができなくなってしまっているのだ。視界に飛び込んでくる情報では、もっとインがある道に見えているにもかかわらず、センターラインを割らないように適度に調整しつつコーナーを抜けることになってしまう。タイヤは確かに左側の車線にあっても、体や特にヒザあたりがセンターラインを割ってしまっているのもよく見かける光景だ。ライダーの方も気が付いていて、バンク角があからさまに増減していたりする場合もある。結局、センターラインをふらふらしながらトレースしてコーナーをやり過ごす、なんてハメに陥ってしまう。これじゃあ気持ち良くないのは当然だ。

これを克服するには、なによりもまず、目線の送り方を意識するのが早道だと思う。

バイクは目で見た方向に進む乗り物なので、目の前に迫ってくるガードレールから目を離してイン側を見てしまうと、もうその時点でインに寄りはじめてしまう。だから、アウト側4分の3の地点を真っ直ぐに奥までアプローチして、そこでリーンして向きを変える、というポイントをまず設定することを意識しよう。で、アプローチするときは、リーンを開始する瞬間まで、目線をそのポイントに置いたままにするのが大事だ。決してイン側に目線を進めてはダメだ。なんとなくインに寄ってしまうからね。ここで大事なことは、目線を固定してはいても、そこを注視しろというわけじゃないってことだ。注目するとそこしか見えなくなってしまってとても危険だ。すぐ先にクルマが止まっているかもしれないし、工事を示すカラーコーンが置いてあるかも知れない。そういうものも視野の端に捉えつつも、目線を動かさないで進行方向を安定させてしまおう、というのがネライなのだ。

ガードレールのすぐそばなどという奥まで恐くて突っ込めないよ、という人は、もっともっと速度を落とせばいいだけのことだ。例えば、想定したラインを徒歩でなぞって見るがいい。ガードレールの側までいったところで、コースアウトしちゃったりするかい?しないだろ?歩いて通れるラインが、なぜバイクでは通れないのだ。えてしてナロウにインに寄ってしまっているライダーは、コーナーへアプローチする速度がしっかりと殺しきれていない。速すぎる。もう一息速度を落とす引き換えに、インに寄るのをガマンして向き変えポイントを奥に取るのがミソだ。後で強く加速するために、まずは黙って速度を殺そう。

ガマンして、首尾良く奥まで入り込めたら、イン側センターラインまで、驚くほど道幅が確保できているハズだ。しかも速度も落ちている。この際思い切ってリーンしよう。ガンと向きを変えてしまえ。首をイン側に振るくらいのつもりで、ここで目線も一気にイン側に進めてしまうといい。それでもまだイン側に余地が残されていたなら、アプローチは大成功だ。蛇角もつき、向きも変えられ、しかもイン側にもアウト側にも余裕があるなら、あとは迷わずアクセルをワイドオープンするだけだ。そうだろ?

こうやって、向き変えポイントの設定と、目線の送り方を意識するようにして走り込んだら、右コーナーの苦手意識はほとんど感じなくなった。これが必ずしも正解とは限らないが、まぁ当たらずとも遠からずといった解決方法だったのだろうと思う。

その他に要因として考えられるのが、道路の舗装の実体だ。道路ってもんは、おおむねカマボコ型をしている。センターライン付近がもっとも盛り上がっていて高く、路肩に向かうに従って低くなるのが普通だ。だから、左コーナーでは自然とアウトが高くインが低いバンク状になっていて曲がりやすく、右コーナーはその反対で、イン側が高い逆バンク状になっていて曲がりにくいのは無理もないことなのだろう。

体の使い方も人それぞれだ。オレは利き足というか軸足が右足のようで、片足上げて、と単に言われたら、右足を残して左足を上げるのが違和感がない。だから、アウト側の足をメインで下半身をホールドするときに、左コーナーのほうがしっくりきて、右コーナーでは違和感があるってのは容易に想像がつく。無視できない要因だと思う。この辺になると、リクツじゃなくて反復練習して克服するしか道はあるまい。

余談だが、アメリカは右側通行だ。だから、いつかワインディングをバイクで走るのが楽しみでならない。日本の逆で、右コーナーはイージーに道なりに走れて、左コーナーでは、奥まで入ってセンターラインを気にするという必要がある。その時左コーナーで違和感を感じるだろうか?本当に右コーナーは楽なのか?むしろ右コーナーの苦手意識を完全に払拭するチャンスかも知れないし、興味は尽きないね。


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