だけど、それからの原田は不遇だった。待遇こそマルボロYAMAHAのワークス入りしてリッパになったけど、シーズンオフのテスト中に転倒したケガも響いて冴えが無く、94年は確か0勝だったと思う。この年からビアッジがアプリリアに移籍していたんだが、これがまた1人だけ300ccなんじゃねぇのかっつ〜くらいパワフルなマシンで、怒涛の勢いで、チャンピオンになるんだ。
スタートから大逃げをカマして、はるか前方を1人旅するビアッジに遅れて原田が2位を1人で走り、さらにずっと遅れて3位グループは大混戦、という寒いレースで2位が続く原田は遂に、歴史に残る銘セリフを吐く。
ビアッジに負けたんじゃない。アプリリアに勝てないだけ。
パワー差を痛感したYAMAHAは遂に重い腰をあげて純ワークスマシン、YZR250を投入。だけどコレが(-_-#)
最近のYAMAHA車って、かつてあれほど称えられたハンドリングを忘れきってるとしか思えんぞ。期待したほどパワーは出ず、セッティングのままならないマシンで、タイヤのグリップというか接地感に乏しいマシンだったようで、原田はとっても苦しんだ。ほとんど転倒しない原田が、よりにもよって地元鈴鹿で転倒リタイヤなんてこともあった。
で、遂に原田は究極の決断をした。かつてのビアッジのチーム、アプリリアに移籍!したのだ。ビアッジは確かに速くて強くてすごいチャンピオンだったが、500ccへステップアップする道を模索している間に、その傍若無人な振る舞いからか、チームと不仲になってしまったようだ。あげく500ccにも進めず、結果としてマルボロのスポンサードを取り付けたアーブ金本と組んで、250ccに参戦することになったのが今年、97年だ。
かつて500ccで4強とか5強とか言われた時代が、今、250ccに訪れているね。HONDAに乗るビアッジ、ウォルドマン、ジャック、アプリリアに乗る原田、カピロッシ、誰もが勝つ可能性を秘めているし、お互いに反目してたりするのがコース内でモロ出しで、すっげぇ面白い。ウォルドマンはトップ争いをしている最中にジャックに体当たりをカマされて負けてしまい、ジャックは野郎だ、とか言うし(^-^;)、ジャックはジャックで地元フランスに凱旋してポールを取り、当然優勝を期待されていたのに、力んで一周めにコースアウトしてリタイヤしちまうお茶目なヤツだし。
で、ビアッジは今年全然勝てないようだと、なぁんだ、やっぱりアプリリアのおかげで勝てたんじゃないか、と言われかねないので、そうじゃない、自分が速いんだ、ということを証明するシーズンになった。もちろんアプリリアの原田にだけは絶対に負けられない。勝負の世界にレバ、タラは禁物、というが、もしも同じマシンに乗っていたなら、どっちが本当に速かったのか、というのは誰もが知りたいよな。でも、原田びいきのオレとしてはNSRじゃ上等過ぎだ、くらい思ってるぞ。腐れハンドリングのYZRに乗せなきゃ、やっぱ。
で、当の原田は開幕前から、まぁいきなりチャンピオンは無理でしょ、まずマシンに慣れてそれから考えます、みたいなことを言って回りをケムに巻いていた。
マシンの違いも大きくて、アプリリアはロータックスというメーカーのエンジンを積んでいるんだけど、これはロータリーディスクバルブという吸気バルブを使っているんだ。これに対して日本製の2stのエンジンは今ではもうみんなリードバルブを使っている。
リードバルブってのは簡単に書けば、樹脂製の板を2枚、お互いに押し付けあうように、>のような形に配置したものだ。開いている方がキャブ側で、閉じてる方がエンジン側。取り付ける場所によって、(クランク)ケースリードバルブとかピストンリードバルブとか、いろいろあるけど、負圧によって混合気が吸い込まれるとき、>が=のように開いて吸気するっていう原理はみんな一緒。しまいにゃパワーリードバルブなんていう、いったいなにがパワーなの?というネーミングもあるみたい。よく知らんけど。
で、なんで日本製のバイクにこの形式が多いのかというと、おそらく中低速トルクと高回転での特性を両立しやすい、つまり、2stの弱点でもあり魅力でもあったパワーバンドの狭さを補うのに適しているからじゃないか、と思う。一旦バルブを通り越して吸気された混合気は、基本的には吹き返されることがないし、バルブとして樹脂の厚さや形、素材などを調節すれば、どの辺の回転数にパワーバンドを持ってくるかの設定ができるしね。あと、場所を取らないし、エンジンの前後左右、どこにでも好きに配置できるのも魅力だ。だけど、いくら樹脂とはいっても、言うなればただのフタにすぎないからパワーを追求していくと、吸気抵抗になってしまうのかも知れん。
これに対してロータリーディスクバルブってのは、名前の通り円盤型のバルブだ。回転する円盤に穴ぼこが開いていて、その穴から混合気が吸気されるんだ。むか〜し昔のその昔、KAWASAKIがWGPに参戦していたころのKRというレーサーは確かコレだった。でも、日本では時代遅れと思われていたような技術なんだよ。オレもそう思ってた。
なにしろ取り付ける場所の自由度が少ないっつぅかないに等しい。エンジンと同期して回転する円盤だぜ円盤。前後方向からの吸気はほぼ不可能だ。当然エンジンの横っ面につけるしかないよな。しかもいくら薄く小さく作ったところで、高速で回転する円盤だ。慣性モーメントも発生するし、重量だって0じゃない。なにより困るのは、パワーバンドがピンポイント的にならざるを得ない。吸気する瞬間を考えれば、吸気ポートに開いた穴ぼこだろ結局。穴をでかく取れば、低回転だと開いている時間が長すぎて吹き返しが問題になろうし、小さい穴だと低回転では具合がいいだろうが、上まで回るまい。
レース用って割り切りで、アプリリアのエンジンにはいろいろ工夫がされているんだろうし思い切って高回転に明確なパワーバンドを持たせているんだと思う。何しろなんの抵抗もないタダの穴だから、ツボにハマればオニのようなパワーが期待できるもんな。
ただ、ライディングを考えるとなぁ。アクセル全閉状態から開けはじめる、その大事な瞬間のレスポンスがかなり唐突だ、というのをどっかで聞いたか読んだ。コレって痛いよなぁ。原田のライディングスタイルにちょっとマッチしてないよね。
シーズン当初は車体の方向性も、まだまだビアッジ色を強く残してたみたいで、結構苦労していたみたいだし、鈴鹿じゃラスト一周までブッチ切りだったのにエンジン壊れて最後に大二郎に負けちゃったし。
だけど、シーズン中盤にかけて車体まわりも原田のセッティングになってきてまとまりを見せてきたし、ついにフランスでアプリリアでの初優勝!そのときのコメントが爆笑で、最高だった。
コーナーは全然ダメだったけど、エンジンがすごく速くて楽なレースでした。これでビアッジも、自分が今までどれだけ楽して勝ってたかわかったでしょう。
く〜。サラッと言ってくれちゃってカッコイイぜ、原田。さては開幕前から勝ったら言おうと狙ってたにちがいない。その調子でチャンプを獲ってくれ!
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