10/16(金) 父兄面談

今週は、香織の通う幼稚園は面接週間だった。ムリヤリ日本語にすると父兄面談とでもいうのだろう。脱線するが、オレにはどうも、この「父兄」という言葉がすんなり納得できぬ。通常、父兄という場合は保護者の意で使われているよねぇ。でもさ、父と兄だぜ。学校側で「父兄」と言った場合に、今どき父や兄などが集まるとは思えぬ。死にかけた言葉だなぁ、なんて思うよ、書いていて。

一応、学校側から来たレターには、Parent and Teacher Conference と書いてあったんだが、やはり両親が揃っていない子に対する配慮なのか、Parents という書き方は避けているみたいな気がする。常に。単に、その子の保護者ないしは監督責任者、という意味合いで、Parent or Guardian なんていうふうに表現するようだ。

教師が増え続けるが少子化も進む、という現状に単に迎合する形で少人数クラスが導入されている(ようにしかオレには見えない)日本とは違って、香織の通う小学校・幼稚園はもとから少人数クラスだ。恐らく全米でそうなんじゃないかと思う。しかも、公立校だぜ、香織の学校なんて。スネ夫のママみたいなザアマス怪獣なぞ見かけることもない(笑)

別に食うに困っているワケでもないので、私立に入れようかともよっぽど迷ったんだが、いわゆる「学校の成績」くらいアテにならないモノサシもないし、妙に均質化してそうな私立よりも、誰でもウェルカムな公立のほうがいろんな子がいていいんじゃないか、などと思って公立の学校にそのまま入れたんだ。で、結局のところ学費は0ドルだ。いいのかなぁ。最初は送り迎えともハニーが車でしていたのだが、最近では迎えに行くことだけで、登校は近所の子と一緒にスクールバスなんだけど…

あれだけの設備を維持し、スクールバスが家の前で止まってくれて、図書館には本も一杯あるし、体育館もある。まぁ確かにオレは外国人とはいえ納税者だから、税金で運営されている施設を利用する権利はあると言えるとは思うが、まったくの無料というのはちょっと気が引けてしまうほどだ。

でも、そこにはやはり、様々な工夫があるんだよ。まず、ボランティアの存在、そして使用する教材の出処だ。日本では、思うに学校で使用する教材ってのは決められた業者が人数分納入し、各自の生徒が支払うか、ないしは収めた学費の中から学校側が一括して支払うというものだと思う。どんなに雑多な物、例えばクレヨン一箱にしても。使用する教材は当然、量産されているもので非常に綺麗で整然としているに違いない。

が、香織の通う公立校では、クレヨンだの画用紙だのペンだのといった使い減りするものは各自の持ち寄りなのだ。入学前に渡された資料の中に、授業開始の日に持ってくるべき用品一覧が書かれていて、各々が買って持ち込み、クラスで共有するという仕組み。不揃いになってはしまうが、変に業者が介在して、入札が行われたりなどのイヤ〜ンな不透明感などは少しもなくてサッパリしたものだ。

また、その他の、なんというか、授業で使う紙の類、たとえば大きな模造紙に書かれた円や正方形などの図形だとか、大文字小文字のアルファベット、Aとリンゴ、Mとサルなどが書かれているカードだとか、そういうものは、全部ボランティアの人々による手作りだったりする。

このボランティアってのが徹底していて、学校で発生する、ありとあらゆる種類の雑用(といっては失礼だが)が列挙された用紙を入学前に渡され、やりたい項目、できそうな項目に印を付けて学校に提出するシステムになっているのだ。オレも一応、図書館の整理とか、その類のあまり言葉が重要でないものに印を付けておいた。

このボランティアの項目の中には、先生の補助、というのがあって、単にヘルパーと呼ばれているようなのだが、このヘルパーの人は先生と一緒に教室に入り、様々な形で生徒が授業を受けるのを支えるワケだ。一つのクラスにつき二人くらいいるようだ。

香織のクラスは24人で、4人掛けの円卓が6つという構成なので、ここに先生が一人、ヘルパーが二人いれば、大人一人あたり子供は10人以下という比率だ。十二分に目が届くと言えよう。実際、ハニーが香織を迎えに行くと、ヘルパーの人が、今日は香織は見たい本の順番が回ってこなくて泣いちゃったのよ、などと教えてくれるそうだ。

で、肝心の面談だが、オレ、ハニー、香織の3人で教室に入ると、先生が一人で待っていて、香織には紙とカラーペンを渡し、お絵描きしててね、などと言われて始まったのだが… 驚いたことに、ちゃんと成績表があったのだ。で、そこには丸印がたくさんつけられていて、項目を一つ一つ丁寧に説明してくれた。

項目は思いの他多岐に渡っていて、まず大文字のA-Z、小文字のa-zが読み書きできること、数字の1-100までが数えられること、red、blueなど基本的な色(8色だったか)がわかること、△、□などの基本的な図形がわかること、などで、現時点でできていることに丸が付けられていたのだ。

香織は1-10までは数えられるけど、11-20までは順不同なら(笑)いくつか言えるらしい。squareとrectangleの違い、circleとovalの違いがわからないそうだ(笑) アルファベットはまぁまぁ読めるらしい。へぇ〜、頑張ってるじゃん>香織

というような説明を聞いている間、香織は横でカボチャ畑の絵を書いていた。そろそろハロウィーンなので、例のオレンジ色のカボチャをクラスのみんなで取りに行くという、いわゆる遠足が予定されているのだが、香織はそのイベントをとっても楽しみにしているのだ。カリフォルニアに住んでた時、通っていた幼稚園で遠足に出掛けてみんなで遊んだことが、彼女には一番の楽しい思い出なのだ。

が、どうやらインクが切れていて緑色のペンが書けないようだった。するとそれを見た先生が、ペラペラと「書けないペンはゴミ箱に捨ててね」と言ったのだ。香織はO.Kと言って席を立ち、その緑色のペンを隅っこのゴミ箱に捨てるでわないか。

ふぅ〜ん、香織は先生の言ってることがちゃんとわかるんだねぇ。ちょっとお父さん感心したよ。さらに驚いたことに、完成した絵を先生にあげる時に、文法も時制もメチャクチャだったが、とっても流暢な、オレなど逆立ちしてもできない発音で、another schoolでpumpkinに行って、とてもfunだった、と先生に言ったのだ! 先生にもちゃんと通じて、あらそうなの、先生も楽しみだわ、などと言って香織の頭をナデナデしてくれた。すごいねぇ、オレよりよっぽど英語うまいよ>香織

面談も無事に終わって、なんだかムズムズしちゃうくらいホメられて、いい子に育てて立派ですね、くらいのことを言われてしまい、ちょっと親バカがシフトアップしちゃったな(笑) しかし、香織の発音の上手なのには驚いた。そういえば、買い物しているときなんかに、学校で習いたての童謡を口ずさんでいて、英語で歌っているらしいのだがオレにもハニーにもサッパリ何言ってるのかわからないのに、歌い終わったらレジのオバサンにGood Job!!なんてホメられてたりしたなぁ。

やはり、小賢しい文法などより、まずは発音とアクセントがなにより大事なんだなぁ。そういう意味では、オレもハニーももうとっくに香織に追い越されているよ。エライねぇ>香織

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