しっかし、今年のドゥーハンの強さってばスゴイね。確かにクリビレや岡田、あと宣篤とか頑張って脅かそうとはしているけど、結局はいいようにあしらわれている感じ。ドゥーハン側には、追いつめられている、という感じは全然ないし。しかも、彼はなんと自分のセッティング・データを、同じHONDA
NSR V4 に乗るライダーに対して、隠していないそうだ。もはや敵がいない孤高の存在って感じだなぁ。
と、持ち上げたけど、オレは特にドゥーハンのファンってわけじゃない。すごいなぁ、と思いはするがね。メーカーもHONDAは好きじゃない。HONDAってメーカーは、F1にしてもWGPにしても、かならず一時代を築いていて、畏敬の念は抱くが、やっぱりYAMAHAが一番好きだなぁ。
どうしてYAMAHAが好きなのか、というと、やはりオレがWGPを好きになった頃には、YAMAHAも強かったからかな。ケニー・ロバーツ、エディ・ローソン、ウェイン・レイニーといった歴代のYAMAHAのチャンプが、みんな好きだった。
今のNSR500からは考えられないが、当時のNSR500ってのは、馬鹿力はあるけれど、ハンドリングに難があり、特にトラクション不足に悩んでいてセッティングが難しく、どっちかっていうと(というか明らかに)ストレートで勝負するマシンだったと思う。車重もレギュレーションの既定値にほとんど達するまで軽量化されていて、それもかえってリヤのグリップ不足を助長していたように思う。要するに、ライダーの頑張りようがないマシンだったのね。
それに対してYAMAHAは、よく言えば扱いやすいパワー特性、ハッキリ言えば貧弱なエンジンだったが、ピークパワーは劣るもののレスポンスはライダーにやさしく、許容するセッティングの幅が広く、ハンドリングに秀でたものを持ち、明らかにコーナリングで勝負する、ライダー次第というマシンだった。車重も既定値よりかなり重かったみたいだが、そのマスがコーナリング時の安定性に寄与している、という理由(実は資金面の問題だったのかも知れん)で特に大幅な軽量化というのは考えられていなかった。
やっぱり、ストレートで劣るマシンを、ライダーの腕と頭脳で勝つマシン、てのが単純にカッコよく見えたのかねぇ。
だけど、かつてのNSRのハンドリングが悪かったのは、HONDAのエンジニア陣のせいとばかりは言えないと思う。HONDAは今でこそ2stも素晴らしいエンジンを持っているが近代WGPに復帰したときは、あの有名な、4st楕円ピストンのV4、NR500で登場したんだから。これってスゴイよね、ほんと。VF、VFRは当然として、VT、最新のVTRに至るまで、HONDAの4stV4、V2は、まさにNRの子孫と言えると思う。が、同じ排気量で4stってのはいかにHONDAでもツラすぎ、結局2st
V3のNS500が後を引き継ぐことになる。
WGPで通用する2stのエンジンを持たなかった当時のHONDAは、パワーで劣る以上、ハンドリングで勝負しよう、と思っていたワケだ。トップエンドの到達速度では劣るが、軽量な車体を生かして深く突っ込み、コーナー脱出速度をも稼いでトータルで勝負するというね。要はラップタイムが短ければいい。先進的だよねぇ。
それに、HONDAってメーカーは一貫して、ヨソの真似をするのを潔しとせず、という頑固な面を良くも悪くも持っていて、仮に同じようなレイアウト、同じような構成のエンジンを造れば、HONDAの技術ならすぐにパワー競争にも勝てたんじゃないか、とまわりが思っていても、あえてV3のコンセプトを貫く、みたいな気骨があったよね。
そのころのWGPのマシンってのは、オレも詳しく年式とかは覚えてないが、4stでは日本のお家芸の感もある、並列4気筒だったはず。パワー競争に明け暮れ、バンク角は少なくコーナーはやり過ごすって感じ。そこに、軽量コンパクト、とくに横幅の狭いNSを自在にスライドさせて目覚しいスピードでコーナーをクリアするフレディの姿は、他社のエンジニアにものすげぇインパクトをあたえたんだろう。今、ケニーが自分のチームでモデナスKR3というV3エンジンを搭載したマシンを造っているのも、NS500に乗ったフレディの強烈な走りが脳裏にあるからだろう、とまで言われているもんね。ケニーも自分でそう言ってるみたいだし。
で、一方のSUZUKIはというと、スクウェア4というレイアウトのエンジンを搭載したRG500で遂にケニーを破ってタイトルを取ったりして、V3だったNSも1気筒追加してNSR500に進化し、今のV4のNSRの基礎となったりしたんだが、同じV4でもHONDAと、YAMAHAやSUZUKIのV4とでは根本的に違うところがあったんだ。
SUZUKIはV4エンジンをスクウェア4から造った。つまり前2気筒、後ろ2気筒のお互いに2本のクランクを持ち、サイドから吸気するエンジンを、前バンクと後ろバンクを開いてV型にし、Vバンク間にキャブなどを配置してV4を造ったワケ。全体にエンジンの幅を狭く高さを低く造れる上、キャブのデザインにも自由度が産まれて都合がよかったのだろう。この2軸クランクのレイアウトはYAMAHAも同じだ。両メーカーとも今でも基本的には、この構成だろうと思う。
だけどHONDAだけは違うんだよね。なにしろ、NS500に単純に1気筒追加して、V4にしたという構成だから、クランクは1本しかない。部品点数は少ないが、高い精度が要求される上に、横幅も2軸クランクV4の倍とは言わないが若干広くなるし、長いクランクの発生するジャイロ効果もバカにはならないモーメントを生むはずだ。当時はこれが特に強みになっていたとは思えない。が、この辺が、独創を旨とするHONDAらしくていいね。今は不等間隔爆発の、いわゆるビッグ・バンエンジンが全盛だから、その実現のためには1軸クランクってのはとぉっても有利だったそうなんだけど、それはもっと先のハナシ。
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