バイクはなぜ曲がれるのか


そもそも、バイクがなぜ曲がるのか、曲がれるのか、その理由を習ったことがあるかい?オレはない。少なくとも教習所で習うことはできなかった。入所して最初の教習からして、「ハイ、じゃ外周回ってね」っておいおい、それだけか?って感じだもんな(^-^;) それからはただただ、ハンドルに力を入れるな、ニーグリップしろ、ってそればっか。

なぜハンドルに力を入れてはいけないのか、なぜニーグリップをしなくちゃいけないのか、その理由をまず教えて見せろよ、金取る以上。交差点は小回りしろ、って言うけど、どうやれば小回りできるのか、まず教えてからにしてくれよって思いながらも、免許欲しさに見よう見まねでハンコもらってたもんだ…

バイクは寝かせば曲がる。それくらいは見ればわかるが、なぜ寝かせば曲がるんだ。一度くらいは見たか聞いたことがあるんじゃないかと思うが、よくある説明に、円盤を転がすと、傾いた方向に円を描くように曲がり始め、どんどんとその半径を狭めていき、しまいには倒れてしまう、つまり車輪を傾けると向心力が発生するというリクツで曲がれるのだ、というのがある。

…(-_-) それだけじゃわかんねぇよなぁ。バイクにはフロントとリヤの2つのタイヤがあるんだぜ。2個の車輪を前後に繋いだもんを傾けたところで、曲がるどころかパタッと倒れるだけだ。傾けてもパタッと倒れずに円を描いて曲がって行けるのは、フロントタイヤには、ステアリング・ヘッドを軸にして左右に切れる機能があるからだ。バイクが旋回している時には必ず、多かれ少なかれ、フロントタイヤはイン側に向けて切れている。

だけどさ、バイクで曲がるとき、自分でハンドルをイン側に切った覚えある?ねぇよなぁ。クルマならわかるよ。確かに曲がるときにハンドルを回し、フロントタイヤに蛇角を付けて曲がっていくよな。だけど、バイクだって同じようにフロントタイヤに蛇角がつくくせに、乗ってる本人には、そんな操作をした覚えはないんだから困る。

オフィスでパソコンやプリンタなどの重いものを運ぶとき台車を使うでしょ?普通は4個の車輪がついていて、そのうち後ろの2個は向きが固定されているが、前の2個は向きが変えられるように、軸を介して付いているハズだ。台車にはハンドルなんてついてないにもかかわらず、押した方向に自由に曲がることができるのはなぜかというと、この軸が前輪の接地点よりも前にあるのがミソだ。

台車を左に曲げるような力を入れると、まず台車に固定された軸が左に進む。前輪は軸を追いかけるように左に向く。右に曲げる時も同じだ。つまり、前輪は、取り付け軸に常に引っ張られているわけだ。こういう構造を、一般にキャスターといって、取り付け軸と車輪の接地点との距離をトレールという。バイク好きなら、どっかで聞いたことあるはずだ。この、取り付け軸について行こうとして向きを変える力を、セルフ・アライニング・トルクとか呼ぶ。無理に訳せば、自動位置決め力、とでもいうのかな。

本当はもっと、前輪のジャイロ効果とか、ステアリング系全体のオフセット重量とか、複雑な要素が絡みあっているんだろうけど、前輪になぜ蛇角がつくのか、一番大事なことは

バイクのフロントタイヤはステアリング・ヘッドに引っ張られている。

という事実だ。フロントタイヤってバイクの一番前にあるのに、それより後ろにあるはずのステアリング・ヘッドに引っ張られているなんて一見変だが、よく考えれば確かにそうだ。バイクのフロントタイヤは、台車のキャスターと同じ構造をしたものが、単に後ろに傾けて取り付けられているだけで原理は一緒だもんね。

つまり、バイクを傾けると、リヤタイヤには向心力が発生する。一方で、イン側に移動したステアリング・ヘッドに引っ張られて、それを追いかけるようにフロントタイヤには蛇角が付き、結果的に旋回状態に落ち着く、というわけだ。


メール 次へ 戻る