体のホールドとステップ位置


普段は世を忍ぶ仮の姿としてサラリーマンをしているので、久しぶりに峠に出かけてワインディングを攻めると、まず目がついていかない(^-^;) で、だんだんとリハビリしながら1日走ると、体のいろんなところが筋肉痛になる。年はとりたくないねぇ。シーズン最初に筋肉痛になる箇所はいつも決まっていて、太股の前面、とくに外側と、あと、スネにくることもある。腹筋にも少し。

だけど、バイクでただ走るだけなら、リラックスして乗っている限り筋肉痛になどならないよね。てことは、ワインディングを攻めるときは、けっこう筋力を使っているんだろう。普段使っていないのと、シーズン当初で乗れてなくて余計な力が入ってしまっているのとで、筋肉痛などになってしまうわけだ。

バイクをホールドするのに気を付けて力をいれているのは、やっぱり減速する時が一番だ。あとはリーンから旋回中も力を入れる場所は決まっている。

減速時は、体をあらかじめオフセットして、外足の太股、とくにヒザの少し上あたりが、タンク後端に引っかかるようにしているが、実際には、単にイン側真横に移動しているわけじゃない。外側の腰を大きく後ろに引くようにして半身になり、上半身はむしろ少し外側を向くような感じにする。アウト側の尻がシートストッパーに当たるようにすると、ちょうどヒザから脚の付け根にかけて、太股がシートを斜めに横切るような感じになる。イン側の足はブラブラで、尻もシートのイン側エッジに乗るか乗らないか、といった状態だ。

この体勢を瞬間的にサッと作れるようになるまで、実は結構苦労した。なにしろ、あからさまに腰を浮かせてまた座り直すような動作でこれをやると、リヤサスがバウンドしてしまう。限りなく滑るのに近く、リヤサスを伸び縮みさせないようにサラッとやること自体が難しい。また、下半身を後ろに引くために、両手で持っているハンドルをアテにすると、これまたよくない。急げば急ぐほど、ワナワナとハンドルを揺らしてしまいがちだ。

で、一番確実で車体への影響がすくないのは、外足を蹴り出すようにすることだ。外足一本でアウト側ステップに立つようなつもりで、シートから荷重を抜きつつステップを前に蹴り出すと、簡単にスッと腰がシートストッパーに当たるまで引ける。実際には腰をイン側後方に引くため、ステップを蹴る方向はアウト側前方だ。このとき、サッカーのインサイドキックのような具合で、爪先を外側に開いてやると、自然と腰がイン側に入るし、くるぶしの内側でフレームやステップのプレートをホールドできて非常に都合がいい。で、外足はこのまま減速に突入する。

ブレーキレバーを引き、フロントサスが落ち着いて減速Gがかかりはじめると同時に、外足一本でイヤというほどステップを蹴り出す。アウト側の膝を伸ばす感じでふんばる。イン側の足はほとんどアテにしないが、超ベリーハードな減速をするときは、フレームなりステッププレートをくるぶしでギュウッと挟んでホールドするときもある。だけど、やはり基本的にはアウト側のステップに片足立ちする感覚だ。かなり思い切り蹴りだしているようで、裏がフラットでカカトがないブーツや靴だと、前にすっぽ抜けそうな気がしてどうも好みじゃない。

上半身はというと、減速を開始する前段階で、少しだけ伏せておくようにする。背中を丸め、頭を下げ、両腕のヒジは余裕を持って曲げておく。で、減速開始と同時に頭を上げ、背筋で思いっきり上半身を引っ張り起こすようにする。ピョコッと起きるくらいでいいと思う。こうすると一見腕が伸びてハンドルで上半身を支えているかのように見えるが、実際には全然違ってハンドルにはほとんど力はかからない。単に上半身が起き、ハンドルと肩の距離が離れるので腕が伸びるだけのことだ。腹筋にも力を入れて、上半身が前に流れないようにがんばるのだ。

減速終了と同時に上半身をイン側に振り込んでリーンする。充分イン側に重心は移動しているので、ブレーキをリリースしつつ上半身をそっとイン側に入れればグーンとリーンしていくのだが、待っていないで上半身を弧を描くように振り込むほうが素早くリーンができるようだ。強く向きも変わる。このとき注意しているのは、魔女のホウキにまたがっているようなイメージで、中心の腰の部分はほとんど動かさず、軸から遠い肩や頭ほど大きくイン側に振り込むことだ。上半身を振り込んだつもりが、リーンのキッカケだけの動作に終わると、車体はバンク角を深めていくのに、上半身の角度は変わらずに、結果的にリーンアウト気味になってしまい、違和感が付きまとう。思いっきりよく弧を描いて、上半身を振り込むほうがうまくいくようだ。頭が常にステアリングヘッド付近ないしは内側になるように気を付ける。

リーンが終わり、旋回に落ち着いたら、いよいよトラクションをかけていくことになる。このときも、アウト側のステップを使う。土踏まずをしっかりステップに乗せているが、足首を伸ばすようにして、ステップを踏むのだ。イスに座って足の裏が床にべったりと付いた状態で足首を伸ばせば、ヒザが上がるはずだ。このときの足の状態は、旋回中のアウト側の足に近い。足首を伸ばすようにステップを踏むと、ヒザが上がろうとするが、タンクのえぐれた面に当たって実際には上がらないが、ここがミソだ。これを利用して体をホールドする。

ステップをギュウッと踏み、その反力で上がろうとするヒザでタンクのエラを下から押し上げるようにして、ガッチリとアウト側の足を車体に固定してしまう。そしてシートにしっかり乗る。これで両手を離しても体がバイクから離れることはない。この体勢を作ってから、胸を進行方向に向けるようにしてひねり、半身になっていた上半身をイン側に向ける。ガッチリ固まっているアウト側の足を頼りに、リヤタイヤそのものをイン側に向けるような入力をして、旋回半径が少しでも小さくなるようにがんばるのだ。この時点でも、イン側の足はブラブラで、ただステップに置いているだけだ。

結局のところ、良く言われる「外足荷重」というのは全然意識していない。使ってないし、それがなにを指しているのかもよく理解できない。むしろ、リヤタイヤが滑りそうになったときや、切り返しの予備段階のタメを作るときにイン側ステップに荷重したりすることさえある。それ以外では、アウト側のステップを踏んで使うことはあるが、主な荷重はシートに乗っていると思う。だから外足荷重ですか、内足荷重ですか?などと聞かれると困ってしまい、シート荷重です、と答えることにしている。

ステップの使い方も、一番重要なのは、ステップを前に蹴り出すようにして減速に耐えることなので、後ろに下げようと思ったことはあまりない。目一杯腰を後ろに引いた状態でなお、ステップがずっと後ろにあるようでは、蹴り出すような力をかけられず、減速Gに耐えられないからだ。足の裏が後ろから見えそうなステップに交換している人をたまに見掛けるが、いったいどうやって減速Gに耐えているのか謎だ。

ただ上下の位置は変えたいと思うことがよくある。旋回中に外足を固めるときに、あまりにもステップが下にあると、いくら踏んでもヒザがタンクのエラにうまく掛からないので、そういうときは2、3cm上に上げたい。下半身のオフセット量も取り易くなる。レーサーレプリカといったカテゴリのバイクで、タンクに引っかかるところが一切ないときは、いったいどう乗れというんだ、と思って途方に暮れるときもあるが、その点でも916のタンクは秀逸だ。意識しなくてもヒザがはまり、がっちりとホールドできる素晴らしい形状なのだ。


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